

2005年から始動している国家プロジェクトに参画し、当社でもメーカーと協力して、家庭用燃料電池のモニター導入をスタートしました。私はこのプロジェクトの担当の一人として、モニターの募集から機器設置までの段取り、さらに実際に設置する場所の検証、工事の立ち会いを担当し、家庭用燃料電池を確実に設置することが最初の仕事でした。実はこの2005年に入社したばかりで、この大きなプロジェクトに入ることになったのです。とにかく何もわからないまま、お客さまのところへ先輩と出向き、現場で実際の業務を遂行しながら学んでいくという感じでした。まさに「習うより慣れろ!」です。今思うと、当社はゆっくりと育てていくというのではなく、まず責任とやりがいのある仕事を与えて、その責任を全うする過程で多くを学びとるという考え方なのだと思います。たとえ失敗しても、それは確実に成長のための糧になると実感しています。
配属された当初は、研究所勤務なのにいきなり現場を歩き回ることになるとは夢にも思っていなかったのですが、この時に本当にいろいろなことを学びました。これも入社した年と時を同じくしてモニター導入が始まったというタイミングに恵まれていたのかもしれません。
その後は、この導入の実務から導入後のメンテナンス対応、運転データの評価、分析、次期開発に向けてのフィードバックを行っていました。さらに2008年度にフルモデルチェンジする家庭用燃料電池の排熱利用ユニットの開発や遠隔監視システムの開発を担当していました。充実した日々であり、やりがいも大きかったですね。

苦労もたくさんありましたが、それよりも得たもののほうが多いような気がします。研究所にいるだけでは聞くことのできない、お客さまからの生の意見を聞くことができるのは、何よりも貴重なことです。燃料電池を商品化する上で、実際に使うお客さまの声を反映することは必要不可欠です。たとえば見た目ひとつに関しても、お客さまからさまざまなご意見をいただきます。またハウスメーカーの担当者や施工会社の方など、モニター導入に関わる社外の人たちと関わることで、それぞれの立場でどのように燃料電池を見ていて、何を要望しているのか、直接話を聞く機会があることは、開発者にとっては何より貴重なことだと思っています。
また、導入説明のためにお客さまの所へ訪問もしたのですが、お客さまの中にはこちらの想像以上に関心の高い方がいらっしゃいました。商品化を目指して頑張っている自分の商品に、これだけの関心をもってくださるお客さまがいらっしゃることは、やはりものすごく嬉しいですし、頑張ろう!と思いましたね。それだけに、もっともっと良い商品を提供したいと開発にも力が入りました。

“排熱利用ユニット”は、燃料電池の発電時に発生する熱をお湯として回収し、貯湯タンクに貯まったお湯を給湯等に有効利用するための装置です。貯湯タンク内のお湯がなくなると、補助給湯器を利用してお湯を供給できる仕組みとなっています。この補助給湯器に切り替えるタイミングに、給湯温度を下げず、一定に維持できるように制御する機能が給湯温度制御です。この制御は、お客さまが快適に過ごすために重要な部分であり、開発に注力したところですね。
この排熱利用ユニットについては、導入開始から一年が経った頃、お客さまから「お湯を利用している途中に少しぬるく感じる時がある」とのご意見をいただきました。お客さまのご自宅に計測器を設置して現象の分析を進めたところ、制御の不具合ではなかったのですが、お客さまのお湯の使い方によって「ぬるくなる」と感じる場合があることが分かり、
原因解明後には次期モデルで対策を講じました。
これからも、お客さまの声や客観的なデータ分析を大切にして、研究開発を進めていきたいと思っています。

そうですね。2008年度には従来のモデルユニットに関して、メーカの努力により各方面から指摘のあった部分を改善しました。例えば作業性の向上を目的として軽量化や配管取り合いの見直し、システム簡素化によるコストダウン、さらにリモコンパネルが液晶タッチパネルになるなど、格段に高品質になっています。その後の新製品では34台モニター導入して、評価していきました。苦労もありましたが、実際に商品化されるとやはり嬉しいですね。近い将来、一家に一台は当たり前!と言われるようなものになる日が来ればいいと思います。
現在、私は2009年に商品化した家庭用固体高分子形燃料電池(PEFC)とはタイプが違う固体酸化物形燃料電池(SOFC)の開発に携わっています。
燃料電池のプロジェクトは、CO2の削減を最大の目的とする国、メーカ、エネルギー事業者が一体となり、同じ目的に向かって遂行しています。そして高価な燃料電池のコストをいかに削減していくか、いかに地球環境に貢献できるかという、いわば地球規模のプロジェクトです。今あらためて、これほどまでにスケールの大きな仕事に携われていることに感謝していますね。